歯科クリニックのスタッフ採用の問題
近年、歯科クリニックにおけるスタッフ採用がますます困難になってきています。特に医療事務の採用に関しては、さまざまな要因が影響を及ぼしており、人材確保が一層厳しくなっています。
まず、少子高齢化の進行により、若年層の労働人口そのものが減少していることが大きな要因の一つです。働き手の総数が減る中で、医療業界に限らず、多くの業界が人材不足に直面しており、競争が激化しています。
また、医療事務は専門的な知識が求められるにもかかわらず、給与面での魅力が十分でないと感じる人が多く、より条件の良い業界へ流れてしまう傾向があります。
医療業界を志望する人自体が減少していることも問題です。かつては多くの学生が医療事務の専門学校に進学していましたが、近年はその志望者も減り、養成機関の募集人数自体が縮小しているケースもあります。このため、新たに医療事務を目指す人材の供給が減少し、採用が一層難しくなっています。
そのほか、社会全体が転職をしやすい環境へと変化したことも影響しています。特に医療事務のような職種は、他業界へ転職しやすいスキルを持っているため、より労働環境や待遇の良い業界へ流出するケースが増えています。
働き方改革の推進により、医療業界の厳しい労働環境が敬遠されるようになっています。医療事務の仕事は、業務の忙しさや残業の多さ、土日休みが取りにくいといった特徴があり、これが求職者にとってネックになっています。他の業界ではワークライフバランスを重視した働き方が広がっているため、より良い労働環境を求めて他業界へ移る人が増えているのが現状です。
レセコン導入におけるスタッフ採用条件の見直し
近年、政府の医療DX推進や働き方改革の影響を受け、クリニックのデジタル化が急速に進んでいます。その結果、医療事務の採用条件にも大きな変化が生じていると感じられます。
かつて、医療事務の仕事は主に診療報酬の算定やレセプト請求に関するスキルに依存していました。そのため、採用条件としても「診療報酬算定の経験がある方」や「レセプト請求ができる方」といった要件が最優先されていました。
現在でも医療事務経験者やレセプト請求スキルを持つ人を優遇しているクリニックが多い一方で、ITスキルや医療知識に関しては、それほど重視されていなかった印象があります。
しかし、電子カルテの普及に加え、Web予約やWeb問診システム、さらには自動精算機など、多くのデジタルシステムがクリニックに導入されるようになった現在、医療事務の役割にも変化が求められています。
診療報酬算定やレセプト請求のスキルがあればありがたいでしょうが、それ以上に「ITスキル(パソコン操作の能力)」についても優先するべきといえます。電子カルテをスムーズに扱うことはもちろんのこと、Webシステムの管理や、トラブル発生時の対応、さらには新しいシステムの導入・運用に適応する能力が求められる時代となっています。
ITスキルを重視した求人を行うことで、求職者側にとっても、どのようなスキルが求められるのかが明確になり、より適した人材を採用しやすくなるでしょう。
レセプト請求に関する知識は後から学ぶこともできる
レセプト請求に関する知識は、採用後に学ぶことが可能です。ITに関するスキルを持つ人材を採用した場合でも、入社後に先輩スタッフからレセプト請求の方法を学んでもらうことができます。また、外部の研修や講座を受講することで、より体系的に知識を習得することも可能です。
例えば、日本医療事務協会では「未経験者レセプト研修」を実施しており、オンラインでレセプト業務について学ぶことができます。新人教育が難しいクリニックであっても、このような講座を活用することで、効率的にレセプト請求の知識を身につけてもらうことができるでしょう。
参照元:日本医療事務協会|未経験者レセプト研修(https://www.ijinet.com/training/receipt/)